エドゥアール・マネ«笛を吹く少年»をハイパー文化財として立体的再現
近代絵画の祖とも称されるエドウアール•マネの«笛を吹く少年»では、高精細デジタル画像から抽出した筆致やひび割れまでもクローン文化財として再現した。さらに進んで絵画に描かれた世界の立体化をも試みた。
東京藝術大学彫刻科出身の研究員が中心となり、描かれた木製の横笛「ファイフ」のサイズから少年の身長を推定。当時の鼓笛隊の服装などを参照しながら粘土で原型を制作し、石膏で型どりした。その上に油画科出身の研究員が油彩画で彩色し、完成させた。彩色では平面を立体化する際に実際は影が落ちない手、腕の部分は絵具で影を表現した。一方ズボン部の影は立体化によって実際に光源の影響で生まれる影を生かして絵画の陰影表現を再現した。平面作品を三次元化することで、次元を超えた作品鑑賞が可能となった。今後の試みとして、現代科学技術のもとで、実際に笛を吹かせ、体の動きや音色などの時間までも表現し、さらなる次元の超越に挑戦する。«笛を吹く少年»が内包しているさまざまな芸術的価値を、技術•材料の制約から解放、表現するハイパー文化財の開発を進めている。